インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・室町時代10号(糸入れ・地染め・帽子絞り)
5.糸入れ
下絵が完成し、絞りを施す部分を糸で縫っていきます。このとき、縫い始めと縫い終わりの糸を長めに残します。まずは糸入れが完了した状態で地染めを行い、地染めが完了したあと、この糸を引っ張って生地を絞っていきます。
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| 旧衣装の柄 | 柄に沿って糸を入れる |
6.地染め
衣装全体の色を染めていきます。少しづつ染料を加えながら、旧衣装の色に合わせていきます。この作業を行って下さるのは、伝統工芸士の滝本 勇さん。地染め、絞り染めの2回の染色を担って頂きます。
7.帽子絞り
地色が染まった生地に、帽子絞りを施していきます。この作業を行って下さるのは、伝統工芸士の山本二郎さん。糸入れの糸を使って、紅葉文様を絞っていきます。帽子絞りは絞る箇所に芯を入れて糸を巻いて固定する技法です。その防染のかたちが帽子に似ていることから帽子絞りと言ったり、防染の方法から防止絞りと言ったり、職人さんによってさまざまな捉え方があるそうです。この技法に欠かせない道具である「芯」。これを山本さんはご自身で作っておられ、まずは芯作りから見せて頂きます。



染料を加える
釜に生地を入れ染める
染まり具合を見て引上げる



生地を乾かす
見本の色と合わせる
水洗いし脱水、乾燥させる
山本さんの作る芯は、新聞紙を利用した紙芯。紙の芯は湿気を吸うと柔軟に変化するため、防染に適しているそうです。絞る大きさによって、紙芯のサイズを変えて製作します。
今回は新聞紙を数枚重ねたものを準備。巻き始めは霧吹きで濡らして固定したあと、手で整え、力を加えながら巻いていきます。巻き終えたら新聞紙のインクの移染を防ぐために白い紙を巻き、木板で転がして更に密度を詰めていきます。


紙芯
絞る箇所に入れた紙芯


大小さまざまな紙芯のストック
紙芯は新聞紙を何枚か重ねて使う
動画で見てみましょう。
一本の固い棒状になった新聞紙は、包丁で端を切り落とし、あとは適度な長さに切り揃えて芯の完成です。切っていく作業は一見簡単なように見えますが、棒状の芯は非常に固く、しかも潰さずに垂直に切り落とすのは至難の業に違いありません。長年の経験と技が光る作業です。
それでは帽子絞りの工程を見せて頂きます。縫い始めの糸と縫い終わりの糸を合わせてまっすぐに引っ張っていくと、生地部分が袋状になります。霧吹きで生地を湿らせて張りを出し、その袋状の中に紙芯を詰めますが、ここで重要なのは引っ張った糸が生地を巻き込まないように、丁寧に整えていくことです。この作業が甘いと染料が入り込んでしまう恐れがあるのです。また万一、紙芯から新聞紙のインクが染みることを防ぐため、ラップをかぶせて詰めていき、糸で強く巻いていきます。
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| 紅葉の部分を絞る | 糸を引いて生地を整え防染部分を明確にする |
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| ラップに包んだ紙芯を詰めて糸を巻く | 芯で根元を固定し糸を巻く |
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| 上部を防染するためナイロンを巻き付ける | ナイロンの根元に糸を巻き付ける |
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| 完成 | 裏生地の様子 |
動画で見てみましょう。
帽子絞りに使われる芯は、プラスチックや樹脂製など、職人さんそれぞれの使いやすさの追求によってさまざまな種類があります。今までも紙製のものを見かけたこともありましたが、まさか職人さんが手作りで準備しておられたとは知りませんでした。そして今回作るところを見せて頂いたのは初めてのことで、知恵と工夫と技術が合わさった作業を見学できたことは貴重な体験でした。
絞りの作業はとにかく、徹底した防染作業が根幹にあります。二重三重の防染処理を施し、丁寧で根気のいる作業が求められます。昔は竹の皮を巻いて防染をしていたというお話をお伺いして大変驚きましたが、昔も今も、身近なものを道具として使い、知恵と工夫を凝らして仕事を進めておられることに感銘を受けました。
帽子絞りが完成すると、その部分を染め分ける、絞り染の工程に進みます。
→絞り箇所に入れる紙芯を作る 次は絞り染めの工程です。
この日の工程は、
→糸入れの糸を使って生地を絞り、芯を入れて根元に糸を巻く
→絞って帽子状になった部分をナイロンで巻き、糸を巻いて固定する[
→完成
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