全国染織産地合同制作布地
全国染織産地合同制作布地とは
日本の民族衣装であるきもので培われた技術は、全国各地で発展を遂げており、産地という集合体で各々特色を持った技術研鑽を行なってきた。
しかしながらライフスタイルの変化により久しくきもの離れと呼ばれる状況が続き、和装品の需要減少、加えて作り手の高齢化や後継者不在等で廃業する先が増え、歴史ある染織技術の継承が途絶えるという危機的状況が続いている。
そのような中、平成6年、更なる技術研鑽と技術継承をはかることを目的とし、併せて時代に合ったものづくりを行なうことでメイドインジャパン製品の存続と発信を行なう取り組みが提唱された。この取り組みは『各産地の染織技術を合わせ、まったく新しい布地を作る』という前代未聞の試みであり、作られる布地は汎用性を広げるため、きもの用の小巾ではなく、洋服やインテリアに使える広巾で制作することとした。
提唱したのは京都織物卸商業組合京都スコープ会。同会ではテキスタイル卸企業17社が集
まり、京都のテキスタイルを国内外のアパレル企業にアピールする「京都スコープ展」を年2回国立京都国際会館にて開催しており、制作した布地はその展示会に併設された「素材開発空間ZERO」というブースで一堂に展示されることとなった。当時京都スコープ展はピーク時の来場者が1789社7009名という国内随一のテキスタイル展として国内のみならずアジア、ヨーロッパからも高い関心を得ていたため、その成果の発信を行なうには最適な展示会であった。
この取り組みは平成16年までの11年間続き、参加した産地は、大阪、小千谷、京都、桐生、湖東、泉州、丹後、西陣、飯能、尾州、富士吉田、北陸、三河、米沢(※五十音順)。制作数は1,089点にのぼった。回を重ねるごとにこの取り組みを目当てした来場者も多くなり、制作布地は海外の著名ブランドを始め国内有名デザイナーからの引き合いもあった。歴史ある染織技術の重なりが新しい技術と布地を作り出したことで技術の研磨と次代へ引き継ぐ産地の活力となった。
当協会では、この資料価値が高い制作布地すべてを譲り受け、貴重な染織資料として染織祭衣装と共に大切に保管するとともに、その布地一点一点に使われた技術をここに紹介するものである。