<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・桃山時代6号(糸入れ) ※室町時代12号同様

 

4.糸入れ

染め分けを行う準備をする作業「糸入れ」です。地の部分と模様の部分の境界線を木綿糸で縫っていきます。縫った箇所は糸を寄せていき、締めた状態にしてまとめ、カバーをかけるなどして染まらないように保護します。模様によっては形を整えるために芯を入れて締め、その部分にカバーをかけます。これにより、地色を染めてもその箇所は保護され、染め分けができるのです。この作業を行って頂くのは伝統工芸士の高木純一さん。下絵の模様部分の青花で輪郭がつけられている箇所に沿ってひたすら糸を入れていくという作業ですが、針の間隔が大きすぎると色が入ってしまうおそれがあり、かといって細かすぎると糸が寄せにくくなってしまいます。ちょうどよい間隔で縫っていくことが必要ということですが、この「ちょうどよさ」は熟練した職人だからこそできるのです。
針は常に進行方向に向けて刺していくことも重要ポイント。四角の模様など、角度のついた箇所は角度の先端で必ず進行方向に針の向きを変えていきます。これによってしっかりと角度が表現できます。

青花でつけられた模様の輪郭に沿って縫う 糸は常に進行方向。線の進む方向に針を向け刺す

 

糸入れの作業(動画)

 




更に模様の部分は形を整えるために芯を入れて締めます。

新聞紙を丸めた芯 素材や形はさまざま



芯の素材や形はさまざま。新聞紙を丸めたものは、職人さん達各々が独自で作られています。新聞紙は水を含むと膨張するため締まりが良く、一番効果的であるようです。




芯を入れる作業(動画)



 

模様と模様が重なった箇所は、重複箇所はひとつの線で表現されています。

このような場合は、重複した線に沿って、もう一本横並びで糸を入れます。
注意すべきところは、決して重なってしまわないように、絡み合わないようにということ。両方の糸それぞれから糸をたぐり寄せることができるようにしなければなりません。

 

重複した線に二回糸を入れる。 拡大図

 

縫っている途中で糸が足りなくなったり、結び目ができたりした場合、そこで止めて新しい糸に替えて再び縫い始めることはできません。なぜなら最終的に糸を寄せる時にそこに微妙な隙間が生まれるからです。
その場合は足りなくなった糸を抜いて新しい糸を入れることが必要になります。といっても、いちからやり直すのは大変です。こういった時のために「糸をすり替える」というやり方があります。


<糸のすり替え>
縫い糸である木綿糸は細い糸が6本絡まって1本の糸になっています。それをほぐし、その間にすり替えたい新しい糸を絡ませます。


 

 

新しい糸を絡ませたら、縫い目を緩ませながら絡ませた糸を通していきます。

 

 

動画でみてみましょう。
糸のすり替え(動画)

 

さて、糸入れの作業での重要ポイント2つ目は「縫いはじめの順番」です。
縫う箇所が密集しているところは、密集している間を縫うと生地が縮んでしまうため、かならず密集しない外側から縫っていきます。縫う順番を考えないと後の作業がしづらくなるのだそうです。

この下絵からみる縫いはじめの順番は、矢印の部分からです。

 


 


この日の工程は、

→下絵を参考に染め分け部分を縫っていく。
→のちの工程では、縫った糸を寄せて模様部分を締めていく。
→締める部分に芯を入れたりして形を整える。
→カバーをかけて保護し、染めに備える。



この工程を辻が花衣装も行い、平成29年度の作業は一旦終了です。
平成30年4月より、いよいよ染め・絞りの工程にうつります。

 

 

 

 

 

 

 
 
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