インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・室町時代5号(糸入れ)
4.糸入れ
糸入れは、染めるところと染めないところを分けるため、下絵に描かれた柄の線に沿って糸で縫っていく作業です。糸入れは染め分けの準備作業で、この工程を行って下さるのは、伝統工芸士の福濱弘恭さんです。
まず針に糸を通し、下絵に描かれた線に沿って均等な間隔で縫っていきます。このとき針は動かさず、生地を動かしていくのがポイント。波をうつように縫うことから「波縫い」と呼ばれています。縫い糸は通常白の木綿糸を用いますが、室町5号は雪輪や花びらなど細かな模様が多いため、小さな模様の輪郭線は青色の糸で、大きな模様の輪郭線は白色の糸を用いて縫っていきます。これは糸の色を変えることで模様の見落としを防ぐために行われます。
下絵 | 下絵の線に沿って針を入れる |
波縫いする | 模様の輪郭線上に糸が入る |
終わりの糸は長めに残し、始めの糸と終わりの糸は互いに引き合えるようにする | |
下絵(全体) | 糸入れをした下絵(全体) |
小模様は青、大模様は白。糸を使い分け | 生地の裏面 |
動画で見てみましょう。
糸入れは染め分けとなる帽子絞りのための準備作業と前述しましたが、昔は内職などに出したり、職人の家族によって行われてきました。福濱さんのような絞り職人は、絞りだけを専門に行っていたそうです。しかし高齢化や時給制の仕事が増えたことで、糸入れのような出来高制の仕事はやる人も居なくなり、現代では絞り職人自らが糸入れの作業を担うことが主流になっています。このことは高齢化が進む職人にとって大きな負担であり、離職を招く深刻な問題として組合でも対策に乗り出す動きもあるようです。
この衣装は花びらの模様だけでも約1,000個の帽子絞りが必要で、糸入れのあとは染工場で花抜き(青花液で描かれた下絵を抜く)をしてもらい、絞り作業の終了は年内の予定。糸入れに始まり根気の要る作業がしばらく続きます。
この日の工程は
→下絵の線にそって糸の長さを決める |
次は染め分け(帽子絞り)の作業です。