<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期6号(完成)

10.完成

 令和6年4月の制作決定から約1年をかけ、ついに「江戸時代初期6号 淡浅葱縮緬地柳桜草紙短冊文様振袖」の復元衣装(これからは「新衣装」と呼びます)が令和7年2月20日、完成しました。衣装生地の復元からはじまり、繊細な筆遣いによる手描友禅や難しい地色の色味の再現といった難題に直面しながらも、無事制作を完了することができました。
 では、さっそく新衣装を見ていきましょう。

 完成しました新衣装がこちらです。

完成した新衣装

 

(画像左)旧衣装と(画像右)新衣装

 

(上段)旧衣装、(下段)新衣装

 

(旧衣装)
【制作年】
昭和6年〜8年(1931年〜1933年)

【衣装情報】
(生地)一越縮緬
(装飾技術)手描友禅、刺繡
(復元)江戸時代初期の風俗を記した文献「還魂紙料」や当時の染織品を参考に復元した。

【制作方法】
生地制作→湯のし・仮絵羽→下絵→糊置き→友禅→仮絵羽ほどき→地染め→刺繡→仕立て

【制作者】
制作   染織講社
時代考証監修   関 保之助/猪熊浅麻呂/出雲路通次郎/江馬 務/吉川観方/田義男/猪飼嘯谷/野村正治郎
調整   松下装束店/荒木装束店/田装束店






(新衣装)
【制作年】
令和6年〜令和7年(2024年〜2025年)

【衣装情報】
(生地)一越縮緬
(装飾技術)手描友禅、刺繡
(復元)旧衣装をもとに復元した。

【制作方法】
生地制作→湯のし・仮絵羽→下絵→糊置き→友禅→仮絵羽ほどき→地染め→刺繡→仕立て

【制作者】
制作   公益社団法人京都染織文化協会
監修   京鹿の子絞振興協同組合
協力   京都府織物・機械金属振興センター
撚糸・整経・製織  川八工場(京丹後市弥栄町)
下絵   西田修一(京都市右京区)    
糊置   松永朗夫(京都市北区)
友禅   安田茂(京都市西京区)
地染め  高山貴一(京都市右京区)
刺繍   長艸敏明(京都市北区)
仕立て  今田光正(京都市上京区)

 

─制作を終えて─

 令和6年3月から準備を始め、4月より生地を作るところから制作が始まりました。繊細な模様表現を行える友禅職人が激減していることや、色挿しに使う細筆を作る職人さんが減少していることなど、課題を抱えていた衣装でしたが様々な職人さんのお力添えもあり、無事に完成することができました。この衣装の特徴でもあるとても細やかで美しい友禅は、糊置の糸目の細さから熟達された職人さんでなければ難しく、色挿しにおいても繊細な色使いとぼかしを求められるなど、高い技術を持った当時の職人によって制作されています。今回、地色部分の淡い色味を効率良く、綺麗に染め上げるため、地染めの工程を友禅の後に行なう等、衣装の制作においてその時々の一番良い方法を考えていただき、旧衣装を忠実に復元した新衣装ができあがりました。

 昨今の制作現場における問題は技術を継承する人材がいないことだけではなく、道具を制作する職人さんの減少や、ツユクサを原料に作られている青花染料が、酸性雨の影響によって色残りのリスクを抱えていることなど、制作の現場で用いられている道具や染料の不足、品質の低下も要因のひとつです。今回の復元制作を通して、伝統技術を継承していくことの難しさと、それらに向き合う現場について改めて強く考えることとなりました。制作の現場に必須である道具類においても、道具の作り方が次の時代に継承されていくことを願ってやみません。

 今後も染織祭衣装の復元制作を通して、染織技術の啓発、そして技術継承に寄与するため、これからも事業に取り組んでまいります。




 
 
 
 
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