インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・江戸時代初期2号(金彩)
11. 金彩
金彩の工程です。金彩とは生地に金箔、銀箔などの金属箔を貼り加飾を施す工程です。今回は生地に実際に金箔を貼っていく工程を見学させて頂きます。江戸初期2号に施されている金彩は竹垣模様の周りや、竹垣を繋げている縄の表現に用いられています。
今回、作業してくださるのは、金彩アート工芸 渡邊 渡邊久さんです。着物や帯の金彩加工の他、絵画や桐箱といった様々なものに金彩加工を行うなど、幅広く活動される職人さんです。
江戸初期2号 旧衣装金彩(一部) |
金彩の作業で主に使用する道具は糊、金箔、カッター、ピンセット、カッティングフィルム、刷毛、箔箸、ガードスプレーです。
上からピンセット、カッター、 箔箸、刷毛 |
カッティングフィルム、 ガードスプレー |
今回は、カッティングフィルムを切って糊を置き、金箔を貼っていく作業を見学します。
最初に、生地にカッティングフィルムを貼ります。作業する部分全体を覆う様に貼り、その後金箔を貼る部分に合わせてカッターで切っていきます。フィルムは青色透明で、貼った生地の柄が透けて見えるようになっており、下の生地を切らないようにフィルムだけを切っていきます。今回、新衣装の生地は薄手という事もあって、慎重な作業が求められます。
模様に合わせて切っていく | 持ち方を変えつつ 集中して切っていく |
切ったフィルムをピンセットで剥がしていきます。切った部分以外のフィルムが剥がれないよう周りを押さえながら剥がしていきます。このフィルムを剥がした部分に樹脂製の糊、そして金箔を貼っていきます。
一緒に剥がれないよう 周りを押さえる |
剥がした後 |
次は、糊を刷り込んでいく工程です。糊を置く前にフィルムを切った部分にガードスプレーを吹きます。これを行うことで、生地の裏に糊がしみることを予防し、生地が縮みにくくなります。
スプレーが完了したら、刷毛で糊が均一になるよう刷り込んでいきます。しっかりと生地を密着させるため乾燥をはさんで2回行います。さらに、竹垣の重なる部分には、筆で3回目の糊をおきます。これを行うことで、2回糊を置いた部分と比べて、糊に厚みが生まれ、金箔を貼った際に立体感や奥行きが生まれます。
糊置き1回目 | 糊置き2回目 |
糊置き3回目 |
箔を貼っていきます。箔箸と柔らかい刷毛で金箔を軽く裂いてから、糊を置いた場所にそっと乗せ、刷毛で延ばすようにに貼って行きます。金箔は、息のような少しの風でも吹き飛んでしまうほど軽く、また静電気ですぐにくっついてしまうため、金属製のピンセットではなく、竹製の箔箸で作業を行います。
使用する金箔 | 箔箸と刷毛で金箔を軽く裂く |
糊を置いた部分に金箔を置く | 刷毛で延ばすように貼っていく |
動画でみてみましょう。
十分に乾燥させた後、余分な金箔を掃除機で吸い取ります。その後、残りのフィルムを剥がしていきます。
余分な金箔を掃除機で吸い取る | 竹垣にかかっていた フィルムも剥がす |
この後、アイロンなどで熱処理を行い、金彩を施した部分に保護フィルムなどで加工を行います。
この作業を行うことで、金箔が剥離しにくくなる他、表面に浮いてきた糊のべたつきも防ぐことが出来ます。
完成
作業前 | 作業後 |
金彩が施されることで、友禅で染められた竹垣が引き締まって見え、金彩や友禅の魅力が一層伝わってくるように感じます。桃山時代4号復元制作での金彩作業が昔ながらの伝統技法で行われたのに対して、今回の工程で使われた技法は現代の一般的なやり方であるようです。また、渡邊さんは金彩をどのように施せばより衣装に金彩の効果があるか、とても気を配り作業をして下さいました。糊置きを2回の部分と、3回の部分に分けることで前後感、奥行きを表現して下さるなど、細やかな作業に職人さんの技が光る金彩となりました。
この日の工程は、
→生地にカッティングフィルムを貼り、カッターで切り取る |
次は刺繍下絵の作業です。