<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期6号(糊置き)

6.糊置き

 糊置きの工程です。糊置きとは、生地に描かれた下絵に合わせて、模様の中で色が混じり合うことを防ぐために防染の役割をする糸目と呼ばれる糊を置く友禅特有の工程です。今回制作する江戸初期6号衣装は、緻密な模様表現が特徴的な衣装で、細かく糊を置くところが多くあります。今回作業を行ってくださるのは、京友禅職人の松永朗夫さんです。

作業風景

 糊置きの作業には、糸目糊と柿渋を塗った紙筒を使います。

  

糸目糊 紙筒

 

 今回の作業で使う糸目糊は松永さんご自身で作られたお手製のもので、もち米粉やぬか、水酸化カルシウム(石灰)などから作られています。何故、糊が赤色なのかというと、糊に染料の蘇芳を混ぜているためです。赤く色をつけることで、視認性があがり、色を挿すときに糊置きを行った箇所が分かりづらくなるようなことがなくなります。また、蘇芳は水酸化カルシウム(石灰)と反応すると顔料になり、水に溶けなくなるため、生地に蘇芳の赤色が染みることはないそうです。市販のゴムで作られている糊もお持ちですが、作業する模様や場合によって糊を使い分ける他、風合いや防染具合によっては併用することもあるそうです。

市販のゴム糊
 

 

 紙筒は、京友禅の糊置き作業に欠かせない道具で、紙と口金部品で構成されています。紙は糊を入れても水分で紙が弱らないように、柿渋で防水加工されています。口金部品は、先がねと内がねの2つからできており、先がねと内がねで外側と内側から筒のように丸めた柿渋紙を挟むようにして使います。この筒に糊を入れて絞り出すようにしながら、下絵に沿って糊を置き、防染の役割となる糸目を描いていきます。

絞りだすように糊を置く

 

今回は友禅下絵に合わせて糊を置いていく作業を見学します。

 友禅下絵に沿って筒を動かし、下絵の輪郭部分に糊を置いていきます。

 動画で見てみましょう。

 

 

 この時、注意しなければならないのは、糸目が交わるところです。糊が乾いていない状態で糸目が交わる部分に糊を置くと、交わった部分に糊が溜まってしまい、色挿し部分に糊が垂れてしまうと模様に影響が出てしまいます。そのため、松永さんは複数箇所を同時進行で作業することで、糊を乾かすための時間を取っておられました。

糊が溜まらないよう丁寧に作業する 糊を乾かす間に別の箇所に糊を置く

 

 筒は、糊を絞り出して線を描くように置くという性質上、上から下へ描く動きは出来ますが、下から上に描く動きは出来ないそうです。そのため、本来一筆書きで描くことの出来る円を描くにも半円ずつ分ける必要があり、松永さん曰く、感覚としてはペンより筆の動きに近いのだそうです。

分割して糊を置く 自然に線をつなぐのがポイント

 

完成

作業前 作業後

 

 江戸初期6号衣装は、細い糸目で描かれた模様が特徴的ですが、今回見学させていただいた作業の糸目は、糊置き工程の中でもなかなか見ることの出来ない細さでした。細く、安定した糸目を作るためには、細い口金部品を使うだけでなく、糊置きのスピードを一定に保つ必要がありますが、今回の衣装は緻密な模様にも関わらず、松永さんは丁寧且つすらすらと描くように作業を行っておられ、熟達された職人さんの素晴らしい技術を間近に見ることができました。友禅の特徴とも言うべき糸目は、職人さんの技術の結晶なのだと実感し、今後も引き続き技術が受け継がれていくことを願ってやみません。

 


この日の工程は、

→糊を筒に入れる
→下絵に沿って糊を絞りだすように置く
→糸目が交わる場所は糊を乾燥させるため、直ぐには作業せず、別の場所の糊置きをする
→乾いたら、上記の続きをして糸目を繋げる
→完成


次は手描友禅の作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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