<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

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インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期6号(整経)

4.整経

  整経の工程です。川八工場 代表者の川戸洋祐さんに整経の解説をいただきます。

 糸繰りの工程です。まず整経に適した巻枠で糸を準備する必要があるため、経糸をボビンに巻き取っていきます。綛糸をクゴという枠にかけ、軽い張力をかけながらボビンに巻き取っていきます。張力の強さや糸の掛け方がおかしいと、その後の工程において糸が原因のトラブルが起こる可能性があるため、重要な工程です。

  糸繰りの様子。画像矢印がクゴ

  

 整経する準備の工程です。整経とは経糸をそろえる工程で、所定の位置に合わせて均等に整列させた糸をドラムに巻き整え、ビームと呼ばれる巻芯に巻き取ります。今回の整経のために床に並べられたボビンの数は360個です。今回の衣装に使う生地の経糸は81デニールのため、27デニールの糸3本をまとめて1本として整経します。ボビン3個で1本の糸になるように繋げられ、吊り下げられた120個の輪ひとつひとつに糸を通していきます。しかし、何もないところから糸をかけていくのは大変なので、あらかじめ前の糸を残しておき、それに繋げることでスムーズに作業を行えるよう、本数を調節して、準備を行います。

     均等に並ぶボビン      輪全てに糸を通す
     3本を1本にする      360個のボビン

 

 次に畔(あぜ)取り筬(おさ)に糸を通していきます。畔取り筬には、上緒、下緒、上緒、下緒と順番に糸を通していきます。この作業は2人1組で行い、上緒、下緒と畔を取る人と、筬通しで糸をひっかけて通していく人で分担をします。

       畔取り筬    筬通しで糸を通していく

  

   畔取り筬に糸が通った様子

  

 畔取り筬に通した120本の糸をさらに前筬に通していきます。

 筬通しを使って、1箇所の隙間(1羽)に2本ずつ通していきます。この作業は、畔取り筬の時と同じように、2人1組で行います。前筬に通ったら整経機のドラムに糸をひっかけて、整経の準備が整いました。

    前筬に通していく   整経機に糸をひっかけて完了
 

 整経の作業です。ドラムに糸をひっかけたら、畔を取っていよいよ整経が始まります。今回の生地は、1反の長さが16.5メートル、それを3反織っていただくので、経糸の継ぎ部分や織り出しに必要な部分+αの長さが必要になります。ドラムの1周は5メートルですが、さらに1周を20に区切り、この1区切りあたり25センチメートルを1間(ひとま)と呼びます。上記を計算すると、今回1反を織るのに必要なドラムの回転数は3回転と6間必要になります。

       畔を取る

 

 1走り目です。3反分の長さをドラムに巻く際、1反目(3回転と6間)、2反目(6回転と12間)、3反目(9回転と18間です。それに加えて、+α分として3間多く巻き、合計10回転と1間(20間=1回転)のところでベレンス液を付けて、糸を切ります。結んで輪を作り糸に通したら、その針をドラムと巻き付けられた糸に差し込んで固定します。これで1走り目が終了です。

     巻きつけられた糸

 

  2走り目からは1走り目の場所から120本分の幅+約2ミリメートル左にずらします。あとは1走り目と同様、ドラムに糸をひっかけて畔を取り、10回転と2間、巻き付けていきます。これを繰り返し必要な経糸の本数にします。今回の整経の設定は経糸2216本なので、1度に走れる本数は120本(輪の数)であることを考慮し、18走り後、19走り目に120本から64本を除き56本走らせて完了です。

  整経作業途中 畔取りの様子

 

 動画で見てみましょう。

 

 

 最後にビーミングという整経ドラムに巻き取られた経糸をビームに巻き取る作業を行います。整経で走った分の糸を結んで、針でドラムに留められた糸の束、19束をビームの導布に「へ棒」と呼ばれる金属に通して連結させます。ドラムと巻き取るビームの間には円筒形の棒が数本走っており、張力が分散されるようになっています。

 ビームの導布に繋げる  セット完了
 

 

 巻き取る際は適度に張力をかけて、「機草」と呼ばれる厚紙を噛ませながら巻き取ります。機草には巻かれ続ける経糸同士が絡まないようにする他に、張力を均一に保つ効果もあるため、巻き取る際に歪なかたちにならないように気を付けながら一定の間隔で噛ませます。

 機草は多く巻いても問題ありませんが、機草が少なすぎると経糸同士が絡み合い、張力が均一でなくなったり、経糸が切れる、畔詰まりをおこすなどのトラブルの原因になってしまうため、注意が必要です。また、ビーミングで張力不足が起きると製織中に経糸が緩み始めてしまい、打込斑の原因となるため、機草は整経にとって重要な役割を果たしています。

機草を一緒に巻いていく 巻き終わった糸

 

 今回、生地を制作するためになくてはならない、経糸を整える整経の工程を拝見しましたが、複雑な整経の設計や畔取り筬、前筬入れの細かな作業など準備作業が多く、とても手間のかかるご苦労の多い工程であることを知りました。繊細な作業だからこそ、より緊張感をもって作業を行ってくださっている職人さん方の丁寧なお仕事に感銘をうけました。

沢山の糸が丁寧に通されている


この日の工程は、

→糸繰りを行い、糸をボビンに巻く
→3本の糸を1本になるようにつなぐ
→畔取り筬に糸を通していく
→前筬に糸を通していく
→整経を行う
→ビーミングを行う
→完成


次は製織の作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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