<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

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インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・室町時代5・9号(整経)

3.整経

織物を織る工程は、まず経糸を準備することからはじまります。経糸を均整に配列するには、整経という工程が必要で、整経とは、必要な本数の経糸を、長さを揃えてビームと呼ばれるロールに巻き付ける作業です。この作業を行って下さるのは、京都府京丹後市の小牧繁樹さん。丹後は縮緬を始めとする着物の生地の一大産地ですが、着物の需要減少や職人の高齢化による機屋の減少により、整経業者は廃業または兼業となって年々減少しています。小牧さんも今は日常的には行っていないそうですが、今回は練緯を織って下さる織元金重 田茂井康博さんからお願いして頂き、機械を動かして下さいました。金重さんが用意して下さった14中の糸は髪の毛ほどの細さで、小牧さんもこのような細い糸は今まで扱ったことがないそうです。


14中の糸の一部 髪の毛ほどの細さ

 

 

それでは作業です。前準備として、束にした糸を枠に巻き取ったものを200個作ります。200個の糸をそれぞれ決まった位置の穴に通し(ここでは一つの穴に2本)、糸を集め、整経筬によって上下に綾取りをします。今日の仕事は3880本、14中の糸を2本合せで行っていきます。この糸の長さでは着物に必要な長さ、4丈物(八掛分含む)で8〜9反とれますが、とりあえず6反取りの注文です。4丈物は40尺なので、40尺を6反、それに「経継しろ」を5尺とって245尺。この整経機1回転が15尺なので、245÷15で16回転と5尺。この機械を100本ずつ16回と5尺回転を繰り返して3880本が出来上がるという計算です。ちなみにビーム(巻き取るロール)は鯨尺で1尺38pです。
この糸は非常に細いため、少しの風でもあおられたり、静電気で絡まったりするので、水を含んだ布を近くに置き、都度指を湿らせて作業します。また木枠自体に引っかかって切れる場合もあり、都度木枠にやすりをかけて滑りを良くしたりするなど、糸切れを防ぐために苦心しておられました。
さて綾取りをして糸を固定し、足元の板を操作してビームをゆっくりと回転させ整経開始です。「綾を取る」とは隣り合った2本の糸を交差させることで、織機で経糸を引き出すときに糸の順番が狂わないようにすることです。ビームが回転するごとに、機械の端にある時計のようなものが動きます。巻き始めは一尺ずつ手で通して、200枠の糸が2本合わさって集まっていることを確認し、なおかつ手元でも2本合わせであることを確認します。この時、瞬時に分かるよう黒い紙を貼ったところで糸を確認します。まず100本ずつを巻いて16回転。切れたら直す、直したらまた戻すを繰り返します。時計がチンと鳴ったらあと2回転で終わりという合図。「経継しろ」分を入れて、次を繰り返します。「経継ぎ」とは、機を織る工程で経糸を足したり、変えたりする時に糸を繋ぐ作業のことです。

 

かせ糸を枠に巻く 枠にまいた糸
14中は髪の毛ほどに細い 枠200個の糸を一ヶ所に集める
200本の糸をそれぞれの場所に通し 糸を集める
上下に分ける 整経筬に通して綾取りを容易にする
糸の順番が狂わないよう綾を取る 巻き始め
糸が切れないよう指を添えてゆっくり巻く 前板を踏むと機械が動き後板は止まる
回数を計測する時計。残り2回転で鳴る おまきという布の巻物にまきつけて完成


動画で見てみましょう。

 

 

 

 

糸を扱う上で、風と静電気は大敵。空気に煽られコントロール不能になり、瞬く間に絡まったり切れたりしてしまいます。糸が細いほどその影響は受けやすく、糸繰りから整経に至るまで苦労の連続であったようです。ご苦労をおかけしました。
整経が終わるといよいよ織りの工程に移りますが、細い糸ゆえの糸切れの懸念は今後も続きます。

 

整経は織り工程の要になる作業

 



この日の工程は、

→かせ糸を枠に巻く
→枠に巻いた糸を決まった位置の穴に通し密度を整える
→経糸の綾取りを容易にするために整経筬に通す
→必要反数からビームの回転数を計算する。
→ビームに糸を巻き付けていき、必要数回転させる
→おまきに巻き付けて完成


次は織りの作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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