<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

    

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期2号(刺繡)

13. 刺繡

 刺繡の工程です。刺繡とは、生地に刺繡糸を用いて装飾を施していく技術のことですが、京都で行われる刺繡を「京繡(きょうぬい)」といいます。精緻な技法を用いて行われる刺繡であり、京都の伝統的工芸品です。江戸初期2号の刺繡は衣装全体に広く施され、色とりどりの刺繡糸が用いられているのが特徴的です。

 作業を行って下さるのは刺繡下絵から引き続き、京繡すぎした 後藤亜衣子さんです。今回も技術継承の観点から京繡すぎした 杉下晃造さん指導のもと、後藤さんに作業を行って頂きます。

   江戸初期2号 旧衣装刺繡(一部)

  

   刺繡の作業で主に使用する道具は刺繍糸、刺繡針、刺繡台、てこ針です。

刺繍糸 刺繡針
刺繡台 てこ針
  
   今回は、平繡という技法で生地に刺繡を施す作業を見せていただきます。

 最初に、刺繍台に生地を張ります。生地の上下を固定してから、左右に糸で生地を刺繍台に固定しながら張っていきます。今回の生地は薄いこともあり、しっかり生地を貼って作業することができません。また完全に生地を張ってしまうと刺繡はしやすくなりますが、完成後生地を刺繡台から外した際、刺繡と生地の張り具合にギャップが生まれてしまい、生地がしわになってしまうそうです。その上、施していただいた金彩に影響が出る可能性もあるため、生地の様子を見ながら作業していただきました。

 

バランスを見ながら張る

 

 次に、下絵に合わせて「平繡」という技法で刺繡を施していきます。平繡とは広い面を平らに隙間なく刺し埋める技法です。旧衣装の刺繡から刺繍糸の色や糸の太さ、刺繡の方向を確認し、以前描いた刺繡下絵に合わせて針を動かしていきます。下絵を埋めるように刺繡を施していきます。

 動画で見てみましょう。

 

           

 

 刺繡に用いられる糸は撚りのない平糸のため、刺繡の際に糸がねじれてしまうときは、てこ針で糸をしごいて糸を整えます。

 

糸をしごいてねじれを修正する

 刺繍の箇所によって糸の太さを変更するため、刺繍糸をほぐして糸の数を調整します。今回の刺繍で使われている絹の刺繍糸は、刺繍糸1本につき更に細い絹糸12本で構成されています。刺繍に使われている刺繍糸は職人さんの使いやすい長さで芯に巻かれており、絹の刺繍糸はとても軽く一巻き分の重さを量る場合、キッチンスケール等では重さが表示されないほどだそうです。

  刺繍糸を半分にする 画像上から刺繍糸1本、0.5本、1.5本


 縫い終わりは近くの別の刺繡箇所に2回糸止めをし、最後に刺繡針を下から出して糸を切ります。

  糸止めと糸を切った状態

 

これらを繰り返して刺繡面を埋めていきます。

   枝部分を刺繡  縫い始め
少しずつ縫っていく 完成

 

完成


作業前 作業後
「この部分の刺繡を完成させるのに
約1週間かかる」と後藤さん
江戸初期2号で最も難易度の高い
「相良繡」(柄の飾り紐部分)


  色とりどりの刺繡が生地に施されたことで更に華やかな衣装になりました。後藤さんは旧衣装の刺繡を何度も確認し、刺繡の方向や色など気を配った作業を行って下さいました。 また、杉下さんには刺繡針など道具の中でも職人の手によって作られるものが減少している、入手の難しい状況にあることもお伺いしました。染織文化を守るためには、技術の他、技術を支える道具の存在についても考えなければならないのだということを改めて感じました。



この日の工程は、

→刺繍台に生地を張る
→旧衣装の刺繡糸や刺繡の方向を確認し刺繡を行う
→縫い終わりに糸止めをして、糸の処理をする
→工程を繰り返し刺繡下絵に合わせて埋めるように刺繡を
→ 完了


次は仕立ての工程です。

 

 

 

 

 
 
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