インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・桃山時代6号(下絵)
3.下絵
衣装制作の設計図作りとなる最初の工程「下絵」。この工程を行っていただくのは伝統工芸士の後藤和弘さん(後藤絞画店)です。まず実物の衣装の上にトレーシングペーパーを置き、絞りの染め分け部分を片身ずつ部分的に鉛筆で写して型をとっていきます。
しかし作業を行う上で問題が出てきました。
実物の衣装全体に施された匹田絞りの技法に現代のやり方との相違があり、それをどう対応していくか、検討の必要があるとのことです。現代では型を用いて、絞る箇所にひとつひとつ目印を入れていき、絞りの位置と数が全て均等になるようにしています。しかし昭和初期のやり方では、絞る範囲だけが決まっていて、型を用いずにその範囲を絞りで埋めていくため、絞りの位置や数は、なんとなく見ると揃っているようには見えますが、すべて均等ではありません。しかも現代では一尺幅に粒数は45と決まっているところ実物は60弱あり、このような細かな絞りは現代では困難なのだとか。粒の位置や数が均等でなく、しかも細かい。このような絞りを再現することはできないということです。
絞り型(上は型を掘るためのポンチ) | 実物衣装の絞り(粒の並びが均一ではない) |
現代の技法では型を使用することで、整然とした美しさが表現できます。一方で実物衣装の絞りは、職人の技量に任された、オリジナル性のある仕上がりです。両者比較の出来ない良さがあり、立ち合った関係者はそれぞれ意見が分かれたところですが、いずれにしても粒の細かさの再現は現代の技術力では困難なため、現代の技術にのっとって作業をしていくことに決定しました。
さて、下絵作業です。
衣装の上に片身づつトレーシングペーパーを置いていきます。
トレーシングペーパーの上から柄を鉛筆で写していきます。
こんな感じです。
トレーシングペーパーに鉛筆で柄を写していく作業(動画)
この日の工程は、
→実物衣装に片身ずつトレーシングペーパーを置く |
下絵が描かれたトレーシングペーパーは、このあと正確に手直しされて完成します。
これをもとに白生地で作った仮絵羽に青花で柄をうつしていきます。完成品がこちら。
絞りや摺箔の部分は下絵 | ではこの様に描かれます。 |
絞りの部分は | 規定の型で表現 |
絞りの粒が飛んだ箇所 | (○印)は修正 |
青花で下絵を描く工程は「衣装複製制作(室町時代12号)下絵」でご紹介します。