<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・室町時代10号(染色)

8.染色

 水玉文様の染め(絞染・水色)

帽子絞りが完成し、次は絞り部分の染めを行います。この作業を行って下さるのは、地染めに引き続き、伝統工芸士の瀧本 勇さんです。

     水玉文様(旧衣装)     柄に沿って糸を入れる

 

染める工程は、地染めの時と同様、最初に見本の色に近づけるため、染料や助剤を入れていきます。はじめから色を合わせるのではなく、最初の染まり具合を見て足りない色目を判断し、徐々に染料を加えながら最終的に色を合わせていきます。これは一度濃い色を入れてしまうとやり直しをするのは容易ではないためです。しかし時間が経つごとに釜の温度は上昇し、生地はどんどん色を含んでいくので、この作業を繰り返すのは3回〜4回、30分以内に色目を合わせ、完成させなければなりません。

水洗いをして湿らせた生地を染料の入った釜に入れ、均等に色を入れるためにかき混ぜ、引き上げて一部をドライヤーで乾燥させて見本の色と照合ののち、足りない色目を足して再び同じ作業を繰り返します。この日は3回繰り返して色を合わせました。

 

   釜に染料を入れる     助剤を加える    生地を釜に入れる
 生地と染料をなじませる  引き上げて乾燥させる   色目を合わせる
 更に染料を加え繰り返す  色が合ったら水洗い  脱水して乾燥させる

 

動画で見てみましょう。

 

水玉文様の染め(ばくだん染め・濃い水色)

 次に、水玉の中心部分の濃い水色を染めていきます。このような色がにじむように広がる染め方には「爆弾染め」という技法を使っていきます。爆弾染めには2枚の長方形の板を使い、染める箇所を集めて2枚の板で挟み、固定します。あらかじめ色を合わせた染料の釜に数秒浸し、染まったことを確認して釜から上げます。旧衣装の水玉文様は、中心部から広がるように色がにじんでいます。これに合わせるには、帽子絞りの箇所全体を染料に浸すのではなく、先端部分のみを浸すことになります。染料に浸すこと8秒。緊張して手が震えたそうです。
染料を合わせてあらかじめ色目を合わせておくのも、浸す時間も、すべて予行練習を繰り返した結果に基づいて行っています。

  染料を入れ見本裂を染める   ドライヤーで乾燥させる   旧衣装の色と合わせる
 染める箇所を集めて揃える   先端を板で挟み固定する    固定された絞り部分
     釜に入れる   8秒静止して染料を定着    釜から引き上げる
    染まった部分   染めた箇所の全景    板を緩めて確認
  板から外して水洗い     脱水する       完成

 

旧衣装の水玉文様もおそらくこの方法で染められたものであり、爆弾染めがいつから始まったのかは定かではないが、旧衣装が制作された昭和初期には確立されていたのだろう、と瀧本さんは仰います。この方法はとにかく集中力と忍耐力が必要とのことで、撮影隊が入ることはできず、誰も作業場に入ってこない休日にひっそりと行われました。染まる間の8秒間の静止は特に緊張したそうです。

 

 

水玉文様の染め(絞染・黒色)

 最後に、紅葉文様の背景の黒を染めていきます。黒に染める部分以外はすべてビニールで防染され、ひと塊の状態になっています。

  紅葉文様の背景(旧衣装)   染める箇所と染めない箇所

 

染め方は、水色部分と同様で、染料や助剤を入れて染め、引き上げて色を確認する工程を繰り返しながら、徐々に見本の色に近づけていきます。この日染める黒は、真っ黒ではなく錆色のような黒。この微妙なニュアンスを長年の経験で的確に捉え、何が足りないか、分量はどれくらいかを目測で足していきます。最終的に見本の色に合致するまでの繰り返しの作業は4回。釜の温度上昇に気を配りながら驚くほどぴったり色が合致しました。

 

  染料液に生地をなじませる  染まり具合を見て引上げる    生地を乾かす
  見本の色と照合する   更に染料や助剤を加える  色が合うまで工程を繰り返す
    見本の色と合致  水洗いし脱水、乾燥させる        完成

 

 

動画で見てみましょう。

  

 

染めの工程は時間との戦いであり、釜の温度や色の定着加減を考えながら、迅速かつ的確に色を合わせていかねばなりません。しかし最初から色を合わせようとして濃い染料液を作ってしまうと、その後色が合わなかったときに直しがきかなくなるため注意が必要です。様々な制限の中で、瞬時に色を分析する目と長年の経験則を活かし、ぴったりと見本の色に合わせるところは見事としか言いようがありません。伝統工芸士の技を目の当たりにし、思わず拍手を送りました。


染色が完成すると、ほどきの工程に進みます。

 

 
この日の工程は、

生地を水洗いする
染料と助剤を釜に入れてなじませる
→生地を入れて染まるまでよくなじませる
一度引き上げてドライヤーで乾燥させ、色を確認する
→更に染料などを追加し、見本色と合うまで繰り返す
→水洗いして脱水、乾燥させる
→完成


次はほどきの工程です。

 

 

 

 
 
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