<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期2号(墨絵)

10.墨絵

墨絵の工程です。墨絵とは、墨を用いて柄を描く技法で無線友禅の一種です。

江戸初期2号に描かれている墨絵は、描かれる模様の線が非常に細く、作業が可能な職人さんを探すことに時間を要しました。また場合によっては、細い線を描く為の細筆を作ることから始めなければならないという難題に直面しました。

この度、作業を行ってくださるのは85歳の大ベテランでいらっしゃる伝統工芸士の廣野文雄さんです。廣野さんは普段下絵のお仕事をしておられますが、油絵や墨絵等多彩なジャンルの絵を描かれる絵師でもあられます。手持ちの細筆を使って試していただいたところ、作業可能であることから今回の工程を引き受けてくださいました。

旧衣装の墨絵

  

  墨絵の作業で主に使用する道具は筆(細・太)、硯、墨、バインダーです。

 

   筆(細・太)、硯、墨        バインダー


 今回の作業では、旧衣装に墨絵で描かれている遠景の松を描く作業を見せていただきます。

 

 墨絵で描かれた遠景の松(旧衣装)       松を描く前(新衣装)

最初に墨を磨っていきます。使われているのは、習字などに使われる固形の墨です。墨を丁寧に磨ったあと、バインダーという接着剤を混ぜていきます。バインダーを混ぜることで、染色を行う上で必要な色止めや定着作業の一つである蒸しを行わなくても、アイロンやコテといった熱で墨を生地に定着させることができます。

 

 旧衣装の墨絵を見て濃淡を確認       作業前の墨絵
       墨を磨る     バインダーを混ぜる
バインダーを混ぜた墨を筆に含ませる      フリーハンドで描く

 

最初に松の葉を、水を含ませた薄い墨で描いていきます。少しずつ重ねて濃淡を出しつつまるで水墨画のようなタッチで描いていきます。

 旧衣装を見ながら位置を決める     濃淡を調整して描く

墨は不溶性で消すことが非常に困難です。そのため一度間違えてしまうと修正ができず、やり直しがききません。この作業を、廣野さんはすべてフリーハンドで行います。

 動画でみてみましょう。



その後、さらに細い筆に持ち替え濃い墨で松の枝を描いていきます。筆をゆっくり動かすと墨が滲むため、滲みに気を付けながらの慎重な作業です。



      松の枝を入れていく    滲まないように慎重に筆を進める

  動画で見てみましょう。




 最後に、熱したアイロンで墨を生地に定着させ、乾燥させます。

 描いた部分をアイロンの熱で定着


 完成
      旧衣装の墨絵       新衣装の墨絵

下絵もなくフリーハンドで真っ直ぐな線や丁寧な絵を描かれる、細やかで正確な伝統工芸士の手仕事に感嘆しました。細い線で墨絵を描くことのできる職人さんが少なくなっている昨今、今回の作業はとても貴重なものでした。また細い筆を作られる筆職人の方も、手描きで作業を行う職人さんの減少に伴い少なくなっているという現状をお伺いし、侘しさを覚えました。



 

この日の工程は、

→墨を磨り、バインダーを混ぜる
→薄い墨で松の葉を描く
→濃い墨で松の枝を描く
→アイロンで定着、乾燥させる
→完了


次は金彩の作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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