インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・江戸時代初期6号(友禅下絵)
6.友禅下絵
友禅の下絵の工程です。友禅とは、江戸時代に考案された糊置きの技法によって多彩な色彩表現ができる技法です。当時人気だった扇絵師・宮崎友禅斎の名前が由来となり友禅と呼ばれました。様々な色と絵画の様に美しい柄が特徴的で、京都で作られた友禅を「京友禅」と呼びます。
今回、作業をしていただくのはこの道40年の西田修一さんです。友禅の下絵で重要なことは、模様の境界となる線はのちに糸目と呼ばれる糊置き線になることを考慮しなければならず、模様表現によっては線の太さに強弱をつけることが求められます。江戸初期6号衣装は全体にわたって模様が精緻であるため、下絵もそれに配慮した細かな作業が必要になります。更に、この衣装の生地は薄いため、作業の際には生地のヨレや筆の滲みなどに注意を払わなければなりません。
江戸初期6号 旧衣装 |
友禅の下絵工程で必要な道具は面相筆、化学青花です。今回は溝引き定規も使用されます。
面相筆 | 化学青花 |
溝引き定規 |
本日は、江戸初期6号復元衣装の友禅を行う上で必要になる下絵を描く工程を見学します。
では作業です。まずは旧衣装から下絵の元本となる柄を描出するため、細心の注意を払って原寸で白黒コピーを取ります。コピーに反映できない薄い色の境目などは改めて鉛筆でなぞり、線の境目をはっきりとさせます。
下地と柄を改めて確認 | 袋で衣装と生地を保護、 安全に作業ができる |
次に、汚れを防ぐためコピーした紙を袋に入れて生地の下に敷き、筆を使って柄を写していきます。写す時に使う染料は化学青花です。青花の染料は天然と人工の2種類があり、ツユクサから作られる天然の染料と、デンプンにヨードを反応させて作る人工の染料(化学青花)があります。青花の色素は水に溶けやすい性質があり、水で洗うと消えることから友禅の下書きに用いられています。
この日は、白上げとなる柳模様の部分を描いていきます。生地に写すときは、まず髪の毛の様に細い線で仮の下書きを描いていきます。筆の先端のみを使って細い線を描いていきます。
細く描かれた下書き |
細い下書きの線の太さを調節していきます。一気に完成させるのではなく、少しずつ肉付けするように線の太さ等を調節していきます。
まず、下書きの線の一部分に実際の線の太さと同じ幅の印をつけておきます。次に、その印と同じ幅になるように重ねて描き、線の太さを調節していきます。この方法をとることで、線の太さがわからなくなるのを防ぐことができます。また、重ねて描いていく際、面相筆とキャップ付きペンをお箸を持つ様に持ち、溝引き定規の溝にキャップ付きペンを当ててスライドさせて動かすことで、定規と平行に直線を引いていきます。
線の太さの目安となる印 | 平行な直線が引ける |
動画でみてみましょう。
柳の模様は、友禅の糸目による線で表現ではなく、白上げという地色のついた生地に模様を白く染め抜く技法を用います。下絵は糊置きがされる箇所に青花を用いて描いていきますが、今回のような、白く染め抜く箇所は全て青花で塗りつぶすのではなく、輪郭を取る様に下書きを描いていきます。糊置きをする時に分かりやすいようにしているそうです。
次の工程からはこの下絵を参考に友禅の糊置きを施していきます。
完成
旧衣装 | 新衣装(下絵) |
前述したように、現在青花の染料は天然と人工の2種類がありますが、近年酸性雨等の影響からか、ツユクサから作った青花染料は生地に色が残ってしまう事があるのだそうです。設計図の役割を果たす下絵工程にとって、のちの工程で下絵は消えることが重要であるため、現在下絵には化学青花を使う事が多いそうです。道具などを作る職人さんの減少だけでなく、伝統的に使っていた染料や道具がさまざまな要因で使うことが難しくなっている、という新たな一面から技術継承の難しさを考える1日となりました。
この日の工程は、
→旧衣装の柄を写す |
次は糊置きの作業です。
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