<スタッフ紹介>

北野裕子

 

コラム

 

染織祭の物語

 

第5回 衣装と文書を保管する公益社団法人京都染織文化協会

 

 染織祭の実像を知りたいと思ったものの、史料としては『京都日出新聞』(京都新聞の前身)の記事くらいしか見つからず、平成22年、衣装を所蔵する社団法人京都染織文化協会を訪ねました。協会は京都織物卸商業組合の関連団体で、当時は烏丸室町南東角の旧京都産業会館(現京都経済センター)5階にありました。
 衣装は専用の桐タンスで大切に保管されていましたが、本格的な歴史調査はまだでした。協会の公益法人移行もあり、2年後、担当者とともにKOMSホールの倉庫を探し、55冊の文書を見つけました。この文書によって染織祭の輪郭が少しずつ分かってきました。現在は協会のホームページでも公開されています。
 第3回で書いた平成27年の「日本衣装絵巻」展では年表作成や初めて講演を行い、その後、講演や研究発表を重ね、短い文章は書いたものの、何を重点に置くのかで苦戦しました。そして、今春やっと染織祭の創設理由と全容の解明に挑戦した「京都・染織祭の創設と展開―昭和恐慌・大衆消費社会・産業観光振興の交点」*という論文をまとめました。ネットで公開もされていますので連載を待てない!という方はそちらをご覧下さい。次回からいよいよ染織祭の本題へ入っていきます。

 

京都大学人文科学研究所『人文學報』113号 20194月 147頁。

 

衣装保管の状態 みつかった文書の一部