インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・桃山時代4号(ほどき)
7.ほどき
染色の作業が終わり、地色を深みのあるオレンジ色に染めた帽子絞りの生地が、再び山岸さんのところに戻ってきました。今回は帽子絞りの糸をほどく、ほどきの作業をしていきます。このほどきの作業は、通常発注元(ここでは藤井絞さん)で行うことが殆どですが、今回は作業説明を兼ねて山岸さんが行って下さることになりました。
使う道具はペンチのみ。ビニールで巻いた帽子の糸をペンチで切り、内側のかませた糸をほどき、芯を外します。ほどくのはとても簡単ですが、生地を破くと修正不可能なので、慎重かつ丁寧に行わなければなりません。
染色を施した生地 | ビニールを巻いた麻糸をペンチで切る |
ビニールの帽子を外す | 芯を巻いた綿糸を指でほどく |
芯を外す | 絞った糸を指で切る |
全ての糸をほどく | 出来上がり |
動画で見てみましょう。
生地は染色したので水分が入り、帽子の中の生地は湿っています。ビニールの高い気密性ときつく締めた芯により、水分の逃げ場がなく自然には乾きません。この状態が続くと生地にカビが発生してシミが出来、その度合いによっては直しても消えないため、ほどきの作業は早急に行い、生地を早く乾燥させなければならないのだそうです。
「染め分け(帽子絞り)」の回で、帽子部分は昔は竹の皮、現代はビニールに替わっていることを述べましたが、ビニールの出現によって蛸(たこ)絞りという新しい技法が生まれました。これは生地全体をビニールで覆い、部分的に染めたい箇所だけを出して絞るやり方で、蛸の足に似ていることからこの名がつきました。
蛸絞り | ビニールを巻いた麻糸をペンチで切る |
糸を外す | 広範囲のビニールは先端をハサミで切る |
ビニールを外す | 全てほどいて広げていく |
白場に部分的な染め箇所を表現 | 外したビニール |
生地を何枚も重ねて絞らなければならない複雑な模様や、地色が黒や真っ赤などはっきりとしているものは失敗を招きやすいため、熟練の職人さんでも、ほどく時は少し緊張するのだとか。「この衣装はシンプルな模様なので緊張しません。綺麗に出来ました」と山岸さん。白場とオレンジ色の境界が美しく、滲みなどが全くない、完璧な仕上がりとなりました。
美しい染め分け |
作業後は、生地を乾かしてから色を定着させる蒸し、水洗、シワを伸ばす作業を施します。
この日の工程は、
→帽子絞りのビニール部分の糸をペンチで切る |
次は金彩の作業です。