インターネットミニ染織講座
衣装復元制作プロジェクト(室町時代12号)
■石畳取草文様小袖(室町時代12号)
室町時代12号「石畳取草文様小袖」は、野村正治郎のコレクションであった小袖裂を元に復元されています。その細かい縫い締め絞りや細い墨線による草花模様の描絵の技術は非常に高く、しかも生地は室町時代に実際使われていた「練緯」を復元して制作しています。練緯は経糸が生糸、緯糸が練糸で織られた平織の絹織物で、室町・桃山時代に多用されていましたが、江戸時代に縮緬や綸子といった織物が開発されると生地はそれらに移行し、その結果練緯は廃れ技術継承が困難になっていきました。
現代となっては技術継承は途絶え制作することは出来ませんが、染織祭衣装が制作された昭和6年〜8年にはまだ練緯の技術は継承されていたことがこの衣装により確認することができます。練緯はその構造から経年劣化による糸の弱体化が顕著で、制作からおよそ85年余りが経った今では生地が容易に裂ける状態になっているため、当衣装は基本的には貸付不可とし、どうしても貸付けしなければならない場合は平置きの展示方法に限定していました。
衣装の現状(オリジナル)
衣装実物は、生地の劣化により、激しく破れが生じています。補修を行うことは実物の美観を損ねるため断念せざるを得ません。
※クリックで拡大します。
経年劣化による糸の破れ | 経年劣化による糸の裂け |
1.生地選定
前述の通りこの衣装に使われている生地は技術継承が途絶えた練緯です。
練緯の再現は容易ではなく研究から制作に至る時間がかかることから、羽二重(新潟・五泉産地)を代用することに決定しました。
羽二重は経緯ともに無撚糸を使った平織で、織り上げたのちに精練する後練りの絹織物です。
2.仮絵羽仕立て
生地決定後、衣装の詳細寸法を計測して仮絵羽に仕立てます。
<寸法> 丈 3尺6寸8分 袖丈 9寸2分 袖巾 6寸3分 袖口 4寸 丸み 4寸 裄 1尺5寸9分 後巾 9寸6分 前巾 9寸5分 衽巾 6寸3分 衽下り 3寸 エリ巾背 3寸7分 エリ巾 3寸8分 褄下 1尺1寸4分 |
次は下絵の工程です。