<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・鎌倉時代1号(糸入れ)

5.糸入れ

 糸入れの工程です。今回の作業を行って下さるのは、伝統工芸士の山岸和幸さんです。

 今回は、文様部分を絞るための準備として糸入れを行っていただきます。海松文様に使われた折り縫締は、昔から行われている絞りの技法のひとつです。本来は折り目や線が顕著に出ないように円の折り目に沿って当て布をするそうですが、旧衣装に施されているものは当て布がない状態で、敢えて折り目がわかりやすく染められているのが特徴的です。

 

鎌倉時代1号旧衣装(拡大)

 

 前回の下絵工程でつけた印に合わせて、絞るための糸を入れていく工程を見学します。

糸入れに綿糸を使う

 まず、最初に襷部分の下絵に沿って針で縫い、糸を入れていきます。海松文様より先に糸入れを行う理由として、海松文様を先に縫うと折り縫締によって生地にズレが起こり、襷部分に影響が出てしまう可能性があるからだそうです。直線を縫うように下絵に合わせて針を刺し、糸を通していきます。糸を通していくときは布を動かすように持って縫い進めます。針は動かすというより、押している感覚に近いのだそうです。

下絵の線に沿って縫っていく 縫い終わり

 

 続いて、半円部分を下絵に合わせて山折りにして、半円の一番大きな外側の曲線に重ねた生地がずれないように仮止めを行います。


画像赤線部分を山折り 仮止めの様子

 

仮止めを行い固定できたら、半円の中心部分から順番に糸を入れていきます。

動画で見てみましょう。

 

 

  全体に施すことができたら、糸入れの工程は完成です。 

完成

糸入れの箇所は、下絵にて旧衣装と合わせていただいています。しかし締め絞った際に生地が引っ張られて伸びてしまうため、完全に同じような形が出来るとは限らず、下絵において可能な限り再現できるよう、熟慮を重ねて作業を行っていただきましたが難しいそうです。

 また、新衣装の生地は薄く、折り縫締作業の際にずれやすい素材であったそうで、とてもお手数をおかけしました。今回撮影にお邪魔し、制作工程を見学させていただきながら、「糸入れを専門に行う職人さんが現在はほとんどいない」ことや、「今回の糸入れ工程に用いた糸などの道具も製造・販売されているところが限られてきている」ことといった絞り染の現状についてのお話をお伺いしました。山岸さんは本来帽子絞りや桶絞りがご専門ですが、糸入れ専門の職人さんの不足から、糸入れもするようになられたそうです。様々な困難の中で伝統の染色技法に向き合っておられ、今後もこの技法が継承されることを願ってやみません。

 
この日の工程は、

針と糸で、襷部分に糸入れを行う
海松文様部分の生地を半円に合わせて山折り、外側の半円部分を一部仮止めする
半円の中心部分から下絵に合わせて糸入れを行う
→完成


次は下染めの工程です。

 

 

 

 
 
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