インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・鎌倉時代1号(下染め)
6.下染め
下染めの工程です。旧衣装には、紅色の地色に黄色の襷文様と海松文様が施されています。このように染めるには、まず生地全体を黄色に染めてからそれぞれの文様を絞り、その後紅色に染めるという手順が必要です。
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海松文様と襷文様(拡大) |
作業を行って下さるのは伝統工芸士の瀧本勇さんです。生地全体を黄色に染めていく工程を見学させていただきます。今回の染めは染料を溶かして作った染料液に生地をくぐらせて染める、浸染という染色方法で行います。
まずは、事前準備として染める生地を水に浸します。水には助剤として還元漂白剤を混ぜています。この水に生地を浸けておき、染色前に汚れや糸入れの下絵を描くために用いた青花を落とします。
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汚れや青花染料を落とす@ | 汚れや青花染料を落とすA |
染めの工程です。瀧本さんがあらかじめ調合した染料液の中に生地を入れて、手で生地を混ぜるようにして染めていきます。染料液の温度は80〜90度もあり、熱さを防ぐため、軍手の上に防水の長手袋を重ねて作業を行っておられました。また温度を保つために釜を熱し続ける必要があり、作業場は熱のこもる環境で、瀧本さんは時折汗をぬぐいつつ作業をしておられました。
染料液にくぐらせ染める
染色1回目終了
ドライヤーで乾燥
色をサンプルと見比べる
一度染料液から引き上げたら、想定した色味で染まっているかを確認するために、端をタオルとドライヤーで乾かし、事前に制作していたサンプル見本や旧衣装の色と見比べます。瀧本さんは1回目の染色では色の濃さや深みが足りないと、染色液にさらに赤や青、黒の染料を追加して、2回目の染色を行われました。
動画で見てみましょう。
このとき、ふるいの中に染料の粉を入れて、細かくしながら水に溶かすことで、染料が水に溶け切らずにだまになって生地に付着するのを防ぎます。また、ここに酢酸を加えることで、生地の染まりつきが良くなり短い時間で染めることができます。
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乾燥させて色を判断する | 染料をふるいに入れて溶かす |
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再び染色を行う |
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すすぎを行う | 脱水機で水分を飛ばす |
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完成 |
旧衣装が作られた当時の染料の配合は記録に残っておらず、同じ色を作り出すことはとても難しいことだと思いますが、瀧本さんはサンプル見本の試作を重ね、旧衣装に忠実な色を再現して下さいました。染料・助剤など全て目分量で、量りを使わずに作業を進めておられ、瀧本さんの経験に裏打ちされた感覚と技術があってこそ今回の工程が完了できたこと、そして染色の難しさと奥深さを実感することができました。
この日の工程は、
→@還元漂白剤を加えた水に浸けて生地の汚れや青花染料を落とす |
次は括りの工程です。
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