<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・桃山時代4号(糸入れ)

制作職人打合せの開催>

 2020年7月10日、長らく延期になっていた制作職人の打合せが開催され、下絵、糸入れ、染め、刺繍の職人が集まり実物の衣装と対面し、先行して下絵を行った新衣装を並べながら今後のやり方を協議しました。

旧衣装と下絵が終了した新衣装 各々の作業を確認

 

(糸入れ)
旧衣装の絞りの中で、絞りが粗く染めムラが出ている箇所は再現せず、綺麗に仕上げることとする。
(染め)
染める色はオレンジと白に近いグレーの2色。地色(白)と合わせると3色の展開。旧衣装の内側の色を参考に色見本を決定する。
(摺箔)
よく見ると柄に強弱があり、有り型を使った繰り返しの柄ではない可能性がある。柄は旧衣装をそのまま再現する。箔は、くすんだ金色を表現するためにあえて箔をはがして艶を消す摺りはがしという技法が使われている。箔には本金が使用されている。
(刺繍)
細い平糸を使用し、範囲の広い箇所は上から糸で押さえている。糸の色は旧衣装の内側の色を参考に決定する。旧衣装の刺繍は良く見ると同じ柄でも糸の種類や色が違っている箇所があり、複数の職人が分担して作業したことがわかる。今回も複数で行うが、糸の種類や色の統一を徹底する。
(その他)
旧衣装にみる不明な点を協議し、下記の通り決定した。

 

白場は刺繍の欠落と判断。刺繍を施す 柄位置が理解不能だがこのまま再現

 

4.糸入れ

糸入れは、染めるところと染めないところを分けるため、下絵に描かれた柄の領域の線に沿って糸で縫っていく作業です。糸入れをしたら染めない箇所は糸を手繰り寄せ、その箇所をビニールでカバーリングし防染して染め分けします。この工程を行って下さるのは、伝統工芸士の山岸和幸さんです。


糸入れには青色の木綿糸を使用します。白の糸では見えづらいため、わざわざ青に染めた糸を使うのだそうです。そして糸の長さですが、長すぎると絡まって扱いづらく、短いと途中で糸で継がなくてはならないため、下絵に糸を合わせ、それよりも若干長くとって長さを決めていきます。針に糸を通し、線に沿って均等な間隔で縫っていきます。このとき針は動かさず、生地を動かしていくのがポイント。波をうつように縫うことからこれを「波縫い」といいます。縫い目が細かいと染めた所と染めない所の境界(絞りの部分)が緩やかに仕上がり、縫い目が大きいと粗く仕上がるため、依頼者の要望を聞きながら縫い目を調整していくのだそうです。
長年の経験により手がリズムをおぼえてしまっているので、全て同じ間隔で縫えています。終わり部分が近づくと頭の中であと何針かを計算し、最後の一針の間隔を調整します。

 

下絵の線 線の曲線に糸を置き、糸の長さを決める
青に染めた糸を使用 針は動かさず生地を動かして縫い進める
均等な間隔で縫う 出来上がり


動画で見てみましょう。


波縫いは、均等な間隔で縫い進んでいく単純な縫い方です。というと言葉では簡単ですが、実際同じ間隔を保って縫い続けるのは大変難しいことです。長年の経験から「手がリズムをおぼえてしまっている」という職人ならではのエピソードをお伺いし、一朝一夕では出来ない技なのだということを学びました。

 

反った指が長年のご苦労を物語っています

 

 

糸入れの作業終了後、花抜きの処理をし、帽子絞りへと進みます。花抜きとは、青花でつけた色を抜くために、生地を漂白効果のある溶液に一昼夜浸す作業です。



この日の工程は、

→下絵の線にそって糸の長さを決める
→同じ間隔で線を縫っていく


次は染め分け(帽子絞り)の作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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