インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・室町時代12号(かちん描き)
6.かちん描き
染色作業を終え、辻が花技法に欠かせないかちん描きの作業です。そもそも辻が花とは縫い締め絞りを中心に、描絵や摺箔などを部分的に併用して模様を表す染織技法をいいます。特に墨で細かな線を引き模様を描く技術は大変難しく、染織大国と言われる京都でもこの技術を継承する職人はごくわずかになっています。今回作業をして下さるのは伝統工芸士の松本忠雄さん。まずは衣装に使われているかちん描きの模様部分をトレースにうつしていきます。
実物衣装の模様 |
紙に模様をうつし、トレースに清書。昔は柿渋紙を使ったそう。 |
身頃ごとに制作。 |
模様のぼかしの部分を切り取っていく。 |
トレースにうつした模様の中でぼかしが必要な部分を取り除き、型が出来上がります。
型の制作作業(動画)
模様を作るかちん描きの作業にうつります。ここからは都合により復元衣装ではなく、別の反物での作業を見せて頂きます。
墨を摺るところからはじまります。 |
かちん描きのかちんとは墨のことです。かちん描きに使う墨は油煙を膠(にかわ)で練ったものです。膠は接着剤の役割を果たすので、墨を固着することができます。
模様をぼかす作業(動画)
描絵を施す作業(動画)
細かな花糸の部分 |
筆描きで均等な線を表現 |
描絵を施すときは下絵の上に生地を置き、下から光をあてて下絵をなぞっていきます。
模様をぼかすときは墨の濃さを調整しながら刷毛で摺っていき、描絵は筆で細く均等な線を引いていきます。スピーディーに作業が行われていきますが、どれひとつ取っても大変難しい作業です。
模様に独特の雰囲気を出し、衣装のオリジナル性を高めてくれるかちん描き。模様の型を作るところから始まり、気の遠くなるような数の模様をひとつひとつ手作業で作っていく技術と根気のいる作業です。
「後継者はいない」という松本さん。悲しいことですが、いつか復元衣装の次の復元が出来なくなる日がくるかもしれません。
松本さん「実物衣装の描絵はやはり伸び伸びとして手慣れているね」 |
この日の工程は、
→生地の模様を紙にうつす。 |
衣装のかちん描きがすべて終了すると、いよいよ仕上げです!