インターネットミニ染織講座

紕帯のできるまで(染めた生地の色を定着させる<蒸し・水洗・乾燥・湯のし>)

 

紕帯の生地選定〜生地を染める<引き染め>からの続きです。

 

3. 染めた生地の色を定着させる
前回では紕帯の生地を引き染めという染色方法で染めました。しかし染めた色は、そのままでは完全に色が浸透した(染まった)とは言えず、不安定な状態です。そこで、染めた色をしっかりと定着させるために熱を加える「蒸し」という工程に進みます。「蒸し」の作業でしっかりと色が定着した生地は、「水洗」して糊などの不純物を洗い流し、乾燥を経て「湯のし」と呼ばれる仕上げ加工を施します。

 

(1)端縫い
これから行なう工程を生地一枚一枚で行なっていては手間がかかるため、 帯や半衿など比較的長さの短い生地は端切れを縫い付けて一反の生地にします。これが端縫い(はぬい)という作業です。
端縫いを施すことにより作業ロス等を防ぎ、扱う手間を省くことができます。

 

複数の生地の端を縫って一反の生地にする。

 

 

(2)染めた生地の色を定着させる(蒸し)
熱を加えて染料を完全に浸透させ定着させるための「蒸し」という作業を行ないます。蒸し枠と呼ばれる枠に生地を掛けて、蒸し箱と呼ばれる大きな箱の中に入れ、100℃程の高温で約20〜40分(色によって時間を調節)蒸して色を定着させます。これにより製品化したときに色落ちや色泣きを抑えることができるので、生地を染める場合には欠かせない必要な工程です。
蒸し枠に吊るす時には生地と生地が触れないように整え、蒸しの水滴が生地に落ちないように慎重に吊り下げて蒸し箱に入れます。
紕帯の生地は他の生地同様端縫いされているため、画像ではわかりづらいですがご了承下さい。

蒸し枠に生地をかけて蒸す準備をする。
蒸し箱(底には水がはってある)

 

(3)色を定着させた生地を水洗いする(水洗)
「蒸し」の作業の後は、「水洗」(「水元」ともいう)の工程に移ります。この作業では、生地に付着する不純物(例えば文様糊のようなもの)を水、あるいは洗浄剤を含んだ水で洗浄して除去します。この時、しっかり不純物が落ちるよう、ゴシゴシとブラッシングします。ちなみに縮緬のようにシボ寄せ(シボを出すこと)を要するものはお湯に通す必要があるため、水ではなくお湯を用い、この工程を「湯通し」といいます。
(※水洗の作業は、明治中頃より鴨川・桂川などで行なわれていましたが(いわゆる友禅流し)、河川の水質汚染につながるため昭和30年頃から次第に行われなくなり、昭和46年に府条例によって禁止されました。現在、観光イベントとして友禅流しが行なわれることはありますが、日常の作業では工場内に人工の川をつくり、室内で作業を行っています)

 


 

(4)乾燥
水洗した生地を乾燥させます。釣り下げて干す自然乾燥と、短時間で乾かすことができる乾燥室を使う方法があります。


(5)湯のし
水洗と乾燥を経た生地は、シワや縮みなどが出てしまいます。このような状態を解消するために「湯のし」という工程に移ります。これは生地に蒸気を当てながらシワを伸ばしたり、生地幅や長さを整えていく、いわば仕上げの工程です。湯のしは「手のし」と「機械湯のし」という方法があり、ここでは「機械湯のし」を使っています。「機械湯のし」はテンターという機械を使い、通常の生地幅に揃えるため蒸気を通しながら乾燥までを一貫工程で行うことができます。機械に通せない生地(絞り染め、刺繍等)は必ず「手のし」の方法を使います。「手のし」は蒸気を生地の裏にあてながら、指定された幅の木の棒を添えて幅を確認しながら職人の手で仕上げていきます。工程は「機械湯のし」と変わりませんが、絞り染めの場合、絞りの凹凸をつぶさないよう幅を揃えて仕上げるのは相当な熟練が必要です。

 

 


次回は、刺繍の作業です。

 

<今回の道具>

蒸し箱
テンター