<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・桃山時代6号(刺繍)

 

9.刺繍

刺繍下絵の作業を終え、刺繍の作業に入ります。今回作業を見せて下さるのは下絵に続き伝統工芸士の杉下晃造さん。2019年6月中旬から始まった刺繍作業は、杉下さんをはじめとした3名の職人さんにより衣装の各パーツに分かれ各々の自宅で作業をしています。しかし下絵をもとに刺繍していく作業も最終的には旧衣装の柄を見て確認しなければなりませんが、旧衣装は各パーツに解くことができず、また持ち回ってもらうこともできません。そこで杉下さん宅に保管して頂いている旧衣装から、それぞれがカメラで柄を撮影し、画像と照合しながら作業を行っているのだそうです。

 

準備作業。端を糸で括り、生地を張って刺繍しやすくします。

 

ではいよいよ作業です。
下絵をもとに針を入れていきます。ここでは松の枝を「まつい繍」という技法で刺繍していきます。

 

  針に刺繍糸を通す  下絵(赤線)をもとに針を入れる 

地目を確認して針を入れる 地目に正確に入れることで糸の流れが揃う
 

 

針は手打針と呼ばれる手作りの針で、太さの違う15種類の針を糸の太さや生地の粗密を考えて使い分けます。ここでは相細を使い、12本の糸を合わせた刺繍糸を通して下絵を参考に刺していきます。
松の枝を表現する「まつい繍」は、線を縫っていく技法で、下絵の線に沿って片仮名のノの字になるよう返し針によって刺し進みます。返し針の重ね具合によって線の太細が出来ていきます。
重要なのは生地の地目に正確に針を刺していくこと。この生地は地紋が入っているので地目がわかりにくく、慎重な作業が続きます。

 

 

動画でご覧ください。

 

 

 

ちなみに途中で糸を換える場合、別の場所を刺してから作業を継続します。作業が終わったらこの部分をカットして抜いてしまいます。刺繍により糸が縫い込まれたので、カットしても糸が解けることはないそうです。

糸交換時の最初の一針(赤丸)

 

2020年3月完成に向けて刺繍の作業も終盤に入りました。(2020年2月6日撮影)
繊細で多彩な京繍は、いつまでも眺めていたい美しさです。衣装の仕上がりを待ち遠しく感じました。

   
   

 

 

他の作業も同様ですが、とりわけ緻密な刺繍の作業は、目を酷使します。「年を取ると暗い場所では刺せません」と、杉下さんの作業場は8畳ほどの広さですが蛍光灯が8本並んでいました。最近のLEDでは逆に眩しすぎてそれはそれで作業し辛いのだそうで、近い将来、蛍光灯の製造が終わりLEDにとって代わる日が来ることを心配されておられました。

 

 

作業場はとても明るい

 

この日の工程は、

 

→生地端に糸をかけ、生地をピンと張る。
→下絵を元に針を刺して刺繍する。


 

 


 




 

 

 
 
京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町78番地
京都経済センター6F