インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・室町時代9号(染色)
6.染色
染め分けのタコ帽子が終わり、染色の作業です。作業を行って下さるのは、たきもと染工 瀧本勇さんです。今回の衣装の地色はビニールに包まれた白地。ビニールから出た部分のみを青系色に染めていきます。表面の色は退色している可能性があるため、過日の打合せで衣装の内側の色に合わせることが決定しました。藤井絞さんから渡された指示書にある小さな色見本をもとに、色を合わせていきます。
まず、色見本をもとに染料を調合し、粉状の染料を網目のついたザルに入れていきます。始めから色をばっちり合わそうとすると、例えば濃すぎた場合は直すのが大変なので、始めは少なく、染まり具合によって徐々に染料を足していきます。お湯が入った釜の中で染料を溶かし、塩を入れます。塩を入れるのは、塩分の作用により染料が生地に染み込みやすくなるためなのだそうです。しかしあまり早く染み込んでもムラが出たりする場合もあるため、加減しながら加えていきます。
生地を釜に入れ、手早く混ぜていきます。釜の中の温度は約70度。ゴム手袋の中に更に綿の軍手を付けて熱さを緩和します。綿は熱を伝えづらいのだそうです。
色が馴染んだら釜から上げ、確認する箇所をドライヤーで乾かし、乾燥した状態で色見本の色と合わせます。
染色促進には塩と酸性の2種類を使う | 染料に塩をひとつまみ入れ生地を投入 |
生地をよく揉み込む | 染料が馴染んだら一旦引き上げ乾燥 |
色見本と照合 | 染料を足す |
染料を調合し | 釜に投入 |
染料を混ぜ、再度生地を投入 | 生地に染料を馴染ませる |
生地を取り出し、 | 乾燥させる |
色見本と合致 | 十分に水洗い |
脱水機にかける | 乾燥させて完成 |
色見本と色が合うまでこの作業は繰り返されます。作業時間が長いほど釜の温度はどんどん上がって酸性に変化していくため、色馴染みを緩やかにするため硫酸アンモニウムを加えて調整するなどコントロールしながら色の濃度を徐々に上げていき、最終的には4回繰り返して色を合わせました。染まった生地は余計な染料を取り払うため、流水で何度も洗い、水に色が付かなくなったら、生地を専用の脱水機にかけ、乾燥させて完成します。
動画で見てみましょう。
染色は常に時間との戦いです。時間をかけずに色を合わせていく作業は大変プレッシャーのかかることだと思いますが、熟練した職人さんは、色加減だけでどの色がどの程度必要かがわかるようです。言葉では説明するのが難しいスゴ技に触れ、流れるような作業風景をうっとりと眺めてしまいました。
硫酸アンモニウム(黄色の袋) |
この日の工程は、
→見本色に合わせて染料を調合し、釜に投入する |
次は辻が花(描き画)の作業です。