インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・室町時代5号(辻が花〜彩色〜)
7.辻が花
古くは室町時代末期から江戸時代初期にかけてのごく短い期間、小袖の模様表現に用いられていた技法・辻が花。縫い締め絞りと描き絵、時には摺箔を用いて模様を表現するこの技法は、中世に最高潮を迎えますが、江戸時代に入るとぱったりと姿を消し、「幻の技法」とも呼ばれていました。近代以降復興がなされ、その技術は現代にも継承されてはいますが、高度な技術の集大成である辻が花の職人は、高齢化や和装産業の低迷などを理由に、減少の一途をたどっています。染織のメッカであるこの京都の中でも辻が花の職人は現在数名に留まっており、技術の衰退が危惧されています。辻が花の技術が残る今だからこそできる復元。今回この工程を行って下さるのは下絵に引き続き、伝統工芸士の松本忠雄さんです。
今回作業スケジュールの関係で、撮影隊がお伺いすることが叶いませんでしたが、後日松本さんから動画を頂きました。ここでは辻が花の彩色を中心に見ていきます。描き画の工程は室町9号をご参考下さい。
緑の雲形模様の彩色工程です。まず緑の染液を筆に含ませ、縫い締め絞りの跡を頼りに直接生地に輪郭を描いていきます。次に取り出したのは小さなコンプレッサー。先ほどの緑の染料液を入れ、輪郭の中に染料を吹き付けていきます。コンプレッサーを使う利点は早く仕上がること。今回は作業スケジュールが押しているため、機械の力を使います。コンプレッサーの欠点は加減が難しいこと。技法と同様、経験の積み重ねが必要になるようです。
筆に色をつける | 縫い締め絞りの跡にそって描く |
生地に直接描く | コンプレッサーに色を入れる |
輪郭の中に色を付ける | 慎重に色を入れていく |
旧衣装の色の濃淡を表現 | 完成 |
動画で見てみましょう。
辻が花の彩色にコンプレッサーを使うという現代的な道具の登場には驚きでしたが、旧衣装の模様のボカシや濃淡をうまく再現され、遜色ない仕上がりとなっていました。筆もコンプレッサーも扱いは難しいですが、依頼品の内容によってたくみに使い分け、完璧に仕事をこなされる姿勢に、職人さんの能力の高さとプライドを伺い知ることができました。
この日の工程は
→筆で縫い締め絞りの跡をたどり輪郭を描いていく |
いよいよ完成です。