<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・鎌倉時代1号(緯糸加工)

3.緯糸加工

 緯糸加工の工程です。衣装の内側から切り出した生地見本を、京都府織物・機械金属振興センターで分析したところ、羽二重生地に用いられる「湿緯(しめしよこ、しめよこ)」の技法で織られていることがわかりました。今回この生地を制作して下さるのは、京都府京丹後市の川八工場(弥栄町)さん。このたび川戸洋祐さんにご説明を伺います。

 新衣装の生地を作るためには「湿緯」の技法を使う必要がありますが、今回は湿緯に似た生地を制作するため下漬け油剤で柔らかくする方法で生地の風合いを再現してくださることになりました。「湿緯」は緯糸を水などで湿らせた状態で織って作られる、羽二重(はぶたえ)という生地を作る際に用いられている技法です。湿緯を行うことで緯糸が柔らかくなり、織機で織る際に緯糸をしっかりと打ち込めることで緯糸と経糸双方を曲がった状態(経緯曲がり構造)にすることができ、織組織を緻密にすることができます。

 本来の湿緯工程では水を使って作業を行うため、織機、シャットル、上管、管巻機械が水濡れに対応している必要があるそうですが、川八工場さんがお持ちの製織における道具は水に対応していません。そこで、湿緯工程の目的が「糸を柔らかくする」ということなのであれば、同じく糸に柔軟性を与えるために使用されている油剤で代用ができないか、という川戸さんのアイデアで油剤を使って湿緯の工程を行っていただきました。

 今回は緯糸加工を中心にご説明をいただきました。

 まず金枠に所定の太さに合わせた糸を巻き取って、バラつかない程度の軽い撚りを入れていきます。前回は八丁撚糸機を使っていましたが、今回の生地制作では強い撚りをかける必要がないため使用しません。

    軽い撚りを入れる@     軽い撚りを入れるA

 撚られた糸はシリンダーに巻き取られる形となるため、油剤に糸をくぐらせる工程に備えてHボビンに振り返します。

 撚られた糸をHボビン(画像矢印)に
      巻き取る

 

 次に、緯糸に下漬け油剤をくぐらせながら巻き取ります。水色のトレイに油剤を入れ、糸をトレイに一度経由させ巻き取っていくことで糸全体に油剤をつけられていきます。


 水色のトレー部分に油剤を入れ、
    くぐらせていく
    糸に均等に油剤が付く

 

 先ほどの油剤をくぐらせた糸を乾燥させます。1週間程自然乾燥した後で乾燥機にかけて仕上げを行います

      乾燥させる

 

 最後に、乾燥した緯糸をボビンに巻き取り、緯糸加工は完了です。

 この後さらに糸巻き棒に巻き取り、杼(シャトル)にセットして製織をおこなっていきます。

    再びボビンに巻き取る

 羽二重に使われている湿緯の技術工夫を加えて制作いただきました。江戸初期6号の生地作の際には糸に強く撚りをかける八丁撚糸、今回は糸に撚りをかけず湿緯(通常は水に濡らして制作を行うが今回は油剤にくぐらせ糸を柔らかくすることで代用)というように、糸に様々な加工を施すことで、生地の風合いに変化が見られるという織りの奥深い面白さに触れることができました。

 
この日の工程は、

緯糸に軽い撚りをかける
シリンダーに巻き取られた緯糸を次の作業工程の為にHボビンに振り返し巻く
下漬け油剤をくぐらせながら巻き取り、糸全体に油剤をつける
乾燥させる
乾燥した緯糸をボビンに巻き直す
→完成


次は整経・製織工程です。

 

 

 

 
 
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