インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・江戸時代初期6号(手描友禅)
7.手描友禅
手描友禅の工程です。手描友禅とは、友禅染の描絵による友禅のひとつで、繊細な糊置きと絵画的な表現が特徴です。色を染めることを「色を挿す」ともいうことから「挿し友禅」とも呼ばれます。今回は糊置き工程において糸目糊で囲んだ模様に様々な色を挿して、着物の柄を作っていきます。
作業を行ってくださるのは、友禅職人の安田茂さんです。
まず、それぞれの模様に合わせた色を作ります。ベースになる染料を溶かし、旧衣装の模様の色味に近づけるよう、他の色と混ぜながら色を作っていきます。何度も試し塗りをして確認し、求める色がすべて完成したら、いよいよ色を挿していきます。
絵皿と色ごとに分けられた筆 |
刷毛を使って、糸目糊の内側に色を挿していきます。京友禅の特徴のひとつであるぼかしを作るために中央に濃色、外側にいくにつれ薄色になるように色を挿していき、立体感のある上品な雰囲気を表現していきます。
友禅のぼかしの色は、もとの色からだんだんと薄い色に移行するよう何色も作っていきます。もとの原色を単に水で薄めて作るのではなく、1から1色づつ作っているため、今回安田さんが作られた色は最終的に40色にのぼりました。
模様の細かい部分は筆、 地を塗る時は刷毛と使い分けている |
段階的にぼかす |
染料は水分が蒸発したら濃度が変わってしまうため、染料の保存には十分な配慮が必要です。安田さんは大きめの絵皿に染料を作り、ラップフィルムをかけて冷蔵庫に保存して使用されていました。
完成
旧衣装 | 新衣装 |
多彩色を使って絵画的な表現を行う精緻な模様は友禅特有のものであり、この模様の表現には、糊置き、彩色等職人さん方の細やかなお仕事が欠かせません。高い集中力が求められるこの作業工程に今回は20日ほどかけて取り組んでくださり、職人さんの丁寧且つ細やかなお仕事に感服しました。今回諸般の事情により、作業に立ち合うことは叶いませんでしたが、画像からも友禅のしとやかで繊細な美しさを伺い知る事ができました。
この後、次の工程である地染めの準備として、今回施した友禅の上から防染のための糊を置きます。
通常は地染めを行ってから友禅を施すのが一般的ですが、今回の衣装は、模様の地色に白場が多く使われていたり、白上げが前面にわたる意匠」であるため、地染めを最後に行ったほうが効率がいいことから、地染めよりも友禅を先行して行っています。
この日の工程は、
→旧衣装の模様の色に合わせて染料を作る |
次は地染めの作業です。
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