<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・室町時代9号(本座絞り)

 

5.本座絞り

糸入れの作業を終え、本座絞りの作業です。本座絞りとは疋田絞の元にあたる技法で、疋田絞は絞る箇所である粒を型紙で彫り、それを生地に写したものを目印にして絞括していきます。しかし本座絞りは型ではなく模様の輪郭線だけ描いた白場を手加減だけで絞る技法で、江戸時代までの絞りは本座絞りでした。しかし明治以降は疋田絞が主流になり、現代では本座絞りを行う人は居られないそうです。
作業を行っていただくのは伝統工芸士の川本和代さん。8歳から絞括を始め、この道70年の職人さんですが、川本さんにとっても初めての本座絞りだそうで、同じ絞括師であったお母様の仕事を思い出し挑んで頂きました。

    疋田絞。下絵の粒を絞る


この衣装の下絵も、模様の輪郭線のみが描かれています。本来ならばこの輪郭線を頼りに自由に絞っていくところですが、なにぶん復元であるため、絞る箇所に大きなズレが生じると衣装の雰囲気を損ないかねないことから、紙に描かれた模様の輪郭線に、川本さん自身が旧衣装の絞りの箇所をなぞって目印を付け、全体のイメージを把握していきます。

    模様の輪郭線のみの下絵          旧衣装
     絞る位置を把握する         絞る箇所(拡大)

 

さて絞括の作業です。京鹿の子絞りは左右10本の指を使って行われます。親指と人差し指は生地を折り、小指と薬指は糸を繰り出し、中指で生地を押さえます。粒を括る糸は、撚りのかかっていない絹糸を22本合わせたものを使います。模様の絞る箇所をひとつつまみ出して2つ折、更に折って4つ折りにし、括り糸を広げて巻き上げ、更に粒の下部も巻いて強く括ります。糸を締める時、糸が指ぬきに当たってパチンと音がします。この独特の音は、手括りである京鹿の子絞りの証しでもあります。

  絹糸22本を合わせた強い括り糸        4つに折る
      糸をかける         糸を巻く
     更に下部も巻く         完成

 

非常に速く、細かい作業のため、うまく画像におさまらない箇所が多くありました。
ぜひ動画でご覧下さい。

 

 

 


絞りは、途中で絞り手が変わると粒の大きさや方向などが微妙に変わってしまうため、始めから終わりまで同じ職人が一人で括らなくてはなりません。総絞りのきものだと絞りの数は約15万粒、1年以上かかる作業になるため、職人は体調管理にも気を配らなければならず、高齢の職人さんは大変なプレッシャーを抱えながら日々作業を行っておられるようでした。疋田絞りの職人さんはどんどん減ってきていますが、幸いにも川本さんは娘さんに技術を継承され、今や娘さんも一人前の絞括師として活躍されておられるそうです。また現在お孫さんも絞括技術の習得に力を入れられているそうで、親から子へ、子から孫へと技術継承が行われ、京鹿の子絞りの歴史と伝統が受け継がれていくことに深い感銘を受けました。

 

粒が均等で同じ方向を向いている

 

 


この日の工程は、

→人差し指と親指の爪で粒の部分をつまむ。
→2つ折にし、更に折って4つ折にする。
→括り糸で巻き上げ、粒の下部をきつく締める。
→繰り返し

 



次は染め分けの工程です。



 

 

 
 
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