インターネットミニ染織講座
衣装復元制作・鎌倉時代1号(本染め)
8.本染め
本染めの工程です。下染めの後、絞りを施し生地を染めて衣装の文様を作ります。絞りを施した箇所には染料液が入らないため、染まらない箇所が衣装の文様になります。
作業を行ってくださるのは、下染めに引き続き伝統工芸士の瀧本勇さんです。今回は、下染めと絞りを施した生地全体を紅色に染めていく作業を見学させていただきます。本染めも、染料を溶かして作った染料液に生地をくぐらせて染める浸染という染色方法で行います。
まず、染める下準備として生地を水に浸します。水には酢酸が入っており、酢酸は生地に染料が入りやすくすることで染まりを良くする役割をもっています。
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括り後の生地を水に浸ける |
水に生地を浸けている間に、染料液を作ります。サンプル見本や旧衣装の色味を見つつ、瀧本さんは数々の染料の中から複数選び、色を作られていました。染料の粉をふるいの中に入れ、釜のなかでふるうようにして溶かします。
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染料を複数組み合わせて作る | 様子を見ながら染料を足して 色を調整 |
酢酸と生地を柔らかく仕上げるための助剤を加え、さらに染まりつきや色を調整するために、試し布で様子を見ながら、都度染料を足していきます。
染料液が旧衣装の色に近づいたところで、生地を水から出し染料液の中に入れて染めていきます。
実際に見てみましょう。
全体が染まったら、一度染料液から引き上げます。タオルで絞り、ドライヤーで生地の一部を乾燥させ、自然光の入る明るいところで染まり具合を確認します。生地が乾燥している時と濡れている時では色の見え方が変わるため、色の確認を行う際は都度乾燥させます。ここからさらに旧衣装の色に近づけていくため、必要な染料を追加し、色味を調整した染料液につけ、染色を繰り返します。
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乾かして染まりつきを確認する | 一部を乾かした様子 |
サンプル見本や旧衣装と色を合わせることができたら、酢酸を加えた水につけて軽くすすいだ後、脱水機にかけて完了です。
完成
鮮やかで深い紅色を染めていただきましたが、この複雑な色を表現するためには複数の色を組み合わせる必要がありました。前回の下染めに引き続き、この組み合わせの配合も瀧本さんのこれまでの経験と感覚によって再現され、無事に今回の工程を終えることができました。生地を絞り固く括っていても染色を繰り返すと括った中に染料液が染み込む可能性があるそうで、染色の時間や回数が限られた中で旧衣装に最も近い色を作りだしていただきました。
この日の工程は、
→@生地を水につけている間に、染料を溶かして染料液を作る 次はほどきの工程です。
再び染める
濃く鮮やかな色になった
矢印箇所が文様になる
→A染料液に助剤を混ぜ、試し布で様子を見ながら色を整える
→B染料液に生地を付けて染色を行う
→C生地を引き上げ、端を乾燥させ染めた色を確認する
→D染料液に染料を足して色を調節する
→EB〜Dを繰り返して旧衣装と同じ色になるように染める
→F仕上げに酢酸を加えた水ですすぎ、脱水機にかけ自然乾燥させる
→完成
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